女性獣医師応援ポータルサイト

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家畜や農家の方々と一緒に仕事をする魅力を知り、数少ない女性獣医師の道へ。
体力も必要ですが、若い人たちもみんな楽しくイキイキ仕事をしています。

オホーツク農業共済組合

出身大学:
酪農学園大学
卒業年次:
昭和53年(1978年)
現在の所属:
オホーツク農業共済組合

卒業後現在までの略歴

昭和53年
沖縄県読谷村農業協同組合
昭和58年
網走市農業共済組合
昭和62年
斜網地区農業共済組合
平成20年
オホーツク農業共済組合

なぜ産業動物臨床獣医師になろうと思ったのですか?

獣医師になろうと考えたきっかけは、父が獣医師として農業共済組合に勤務していたこと。自宅に隣接した診療所には、毎日のように近所の農家の方が牛などの患畜を連れてきていたので、子どもの頃から動物には慣れ親しんで育ちました。私たちが大学生だった頃は「牛・馬といった大動物臨床は女にはできない」と言われていた時代です。しかし、酪農実習で酪農家の方と一緒に働かせてもらったときに、「牛や、牛と関わる農家の方々と一緒に仕事をしたい」と思うようになりました。牛を放牧地に放したり、牧草を収穫したり、搾乳をしたりといった農作業も、酪農家のお母さんにとっては当たり前のもの。私もそうした作業を男子学生に負けずにできましたし、何よりとても楽しいと感じました。「この仕事ができるなら、女性が産業動物臨床獣医になることも可能だ」と思い、前例の少ない仕事だけどチャレンジしてみようと思ったのです。

現在のお仕事内容を教えてください。

オホーツク農業共済組合で、乳牛や黒毛和種の診療を行っています。牛が病気になったり怪我をしたり難産になったりしたときに農家から依頼を受け、診療車に乗って農場へ駆けつけます。私の地域は広い農場が多いので、長ければ30キロメートル以上移動することもあり、車を運転している時間もかなり長いですね。

お仕事の中で大切にしていることは何ですか?

診察・治療において大切にしているのは、「牛の感情を読み取ること」。何十年もやっていると、牛の表情でどんなことに不満を抱いているかわかってくるんです。たとえばつながれるのを嫌う牛もいるし、床の材質が悪くて足を痛めている牛もいる。スペースの狭さや寒さ、食べ物の質など、ストレスの原因はさまざまです。そういったことを飼い主さんに提案し、飼養管理が改善されると、その農場で牛の病気や怪我が減ることも少なくありません。

女性として産業動物臨床獣医師に挑戦してみて、よかったと思うことを教えてください。

治療した牛がその後、正常に生産活動に復帰していくのを見ると嬉しくなります。そして、そうした結果に対して農家の方々が喜んでくださり、獣医師として頼りにしてもらえるようになるとやりがいを感じますね。私が大学を卒業した頃は、まだ女性獣医師がほとんどいなかったので、「あまり信頼してもらえないのではないか?」と不安に思っていました。でも、実際に仕事を始めてみるとそんなことはなく、農家の方々はすぐに私のことを頼ってくださるようになりました。よく、いろんな方から「あなたは女性獣医師第一号だから大変だったでしょう?」と言われるのですが、大した苦労もなく現在に至ってます。今は、NOSAIの診療所にも女性獣医師が増えて、子育てもしながらイキイキと仕事をしています。

仕事と家庭の両立で苦労することはありましたか?また、それをどのように乗り越えられましたか?

仕事柄、決まった時間に毎日家に帰ることができないこともあります。保育園のお迎えの時間までに仕事が終わらず、子どもたちを診療車に乗せて往診や診療所の手術室へ連れて行ったりしたこともありました。子どもたちも動物が好きで、私が診療をしている様子を楽しそうに見ていましたし、私が休日に診療所へ出かけるときにも、「私も診療所に連れて行って!」とせがまれたりしました。どうやら診療所に行くと楽しいことがあると思っていたみたいです(笑)。大学生になった下の子どもは今、獣医師を目指して勉強しています。私の姿を見て、同じ仕事をしたいと思ってくれるようになったとしたら、嬉しいことですね。

これから獣医師を目指す学生さんや、現在活躍中の女性獣医師のみなさんに伝えたいメッセージをお願いします!

産業動物臨床は、確かに体力が必要な仕事だと思います。700~800キロもある牛を動かしたり、固定したりするのにはそれなりに力が要りますし、ケガをしないようにうまく危険を避ける慎重さや勘の良さも必要。まさに五感をフルに使う仕事です。元気でさえいれば私のように60歳になっても普通にこなせる仕事ですし、子育てしながら働き続けている女性獣医師は私の周りにたくさんいますよ!