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飼い主のいない猫を地域住民で共同管理する「地域猫活動」に関われたことは、もともと小動物を守りたいという気持ちで入庁した私にとって印象深い出来事です。

横浜市栄区福祉保健センター生活衛生課生活衛生係長

出身大学:
麻布大学
卒業年次:
平成5年度(1993年)
現在の所属:
横浜市栄区福祉保健センター生活衛生課

卒業後現在までの略歴

平成5年
横浜市役所入庁
平成27年
横浜市栄区福祉保健センター生活衛生課

横浜市役所に入庁した動機を教えてください。

子供の頃から動物が好きで、大学に入った頃は将来小動物臨床がしたいと思っていました。しかし、大学の就職説明会で横浜市が動物愛護センター構想を進めているということを聞き、今後は家庭動物の適正飼育啓発事業等に力を入れていくという横浜市の姿勢に関心を持ちました。そうした活動に関わることができれば、小動物臨床だけでは救えない不幸な犬猫を救えるかもしれないと考えたのが、横浜市役所を志望した理由です。勤務地が市内のみでコンパクトである点も魅力的でした。

非常に幅広い仕事を担当されていますが、どういう点にやりがいを感じますか?

自分の発想と取組みが少しでも横浜を暮らしやすい街に整えていくことにつながっていると思うと、やりがいを感じますね。条例改正などの法整備に限らず、小さなルール作りや制度でも市民に受け入れられ愛される取組みであれば徐々に広がり、末永く受け継がれていくことがあります。それを、市民に直接対応する場面で実感できたときには、公務員として嬉しい限りです。政令指定都市としては巨大な横浜市ですが、地域特性は僅差なので共通性が見出しやすいところが利点。そのため、各職場の職員が改善に一致団結して熱心に取り組む姿を見られるのも、所属職員として頼もしく思います。

これまでの仕事の中で、特に印象的なエピソードがあれば教えてください。

飼い主のいない猫を地域住民で共同管理する「地域猫活動」は、住宅地の野良猫によるトラブルを減らすためのしくみとして全国に広がりつつあります。横浜市でも平成25年に地域猫活動に関するガイドラインを作成・配布したのですが、この活動に関われたことは、もともと小動物を守りたいという気持ちで入庁した私にとって、印象深い出来事です。実はこうしたガイドラインはすでに各地で作られていて横浜市は後発だったのですが、それだけに中身を緻密に検証し、よいものができたと自負しています。ガイドラインの配布後は、市民の意識も少しずつ変化し、「野良猫=排除すべきもの」と短絡的に考えるのではなく、「どうすれば猫と人間が共生できるか」を模索していくきっかけになったようです。

仕事と家庭の両立において、どのような点で苦労されましたか?

私が就職した頃は女性獣医師が30人に1~2人という時代。しかし私の周囲の女性の先輩は発言でも行動でも先に立ってどんどん仕事をし、性別の差をまったく感じさせない方ばかりでした。そうあるべきと憧れましたが、出産育児の時期はそうはいかず、突発で休暇を取得したり、閉庁時緊急対応ができなかったりと、思うように働けず精神的にも身体的にも苦しい時期もありました。特につらかったのは、現場でバリバリ働くべき若い時期にそれができず、希望していたキャリアを思うように積めないと感じたこと。出産・育児のために職場を離れることでスキルが落ちてしまうことも不安でした。

出産・育児とキャリアプランに関するジレンマは、どのように乗り越えられたのでしょうか?

私が係長になったのは、育児がある程度落ち着いた40代になってからです。出産・育児をしない人の場合30歳前後で係長に昇進するケースも多いことを考えると、キャリア面で多少の遅れをとったことは否めないと思いますし、多少焦りを感じていたことも事実です。そんな私を支えてくれたのは、「しばらくは蓄積期間と考えて割り切れ」と声をかけてくださった上司や、周囲の理解でした。育児期間には育児を頑張り、それが終わったら再び仕事に打ち込む。そんな風に気持ちを割り切ることができるようになってからは気持ちが楽になり、「獣医師としての自分と、母としての自分」の両方を大切にできるようになったように思います。それに、40歳を過ぎてからでも管理職としてキャリアアップを目指すのは決して遅くありません。私と同じように、育児とキャリアでジレンマを抱える女性は多いと思いますが、焦ることなく頑張ってほしいと思います。

これから獣医師を目指す学生さんや、現在活躍中の女性獣医師のみなさんに伝えたいメッセージをお願いします!

私が就職した頃は女性獣医師が少なく、育児休暇を取得したのも部署では私が最初でした。そのため、私や同僚が自分たちで育児中の女性をフォローする体制を作り上げていく必要があり、そうした積み重ねが「前例」として定着していったように思います。今は女性が活躍している職場も増え、女性同士が同じ悩みを共有しやすい環境となりました。反面、同じ時期に出産・育児が重なると周囲のフォローが間に合わなくなるなど、新しい課題も生まれています。課題に直面したときには、同じ課題を抱える仲間と力を合わせ、解決に向けて行動してみてください。糸口はどこかにあるものです。